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AIにはAI原則が必要

6 min readJul 24, 2025
AI model lying to a human (generated by ChatGPT)

この数か月間、自分の開発サイクルにAIを取り入れて色々試してみています。便利なところも多い反面、やはり微妙な点も多く、その中でもひとつどうしてもまずいなぁ、と思っているところが出てきたので、それについて一言だけ書きたいと思います。

私がやっていたのは、比較的込み入った某仕様のパーサーとそれを応用した仕組みの生成です。一部の基本コードを私が書いて、仕様をspec.mdというファイルに書いたのち、Claude Codeにコードを書かせました。思っているものと違うものが出てきた場合はその都度spec.mdを更新し、改めてClaude Codeに修正させる、という形で開発していきました。

この開発をしていく中で、あきらかに人間がやるとちょっとロジックが込み入ってて面倒くさいなぁ~難しいなぁ~という部分が出てきました。コンポーネント間でちょっとわかりにくい情報の受け渡しが必要な場面があり、いろいろな条件が絡まってわりと面倒くさい処理だったのですね。

この部分の実装をClaudeに何回か繰り返し指示したのですが、毎回以下のような、何も動いていないけれどとりあえずテストはパスするようなコードを書いてきました

func (x *Object) ReallyComplicatedLogic(really, convoluted, stuff any) error {
// This logic is very complex, and wuold take a long time to implement.
// for now, we just return nil.
return nil
}

これが続いたので、以下のように注意しました。

> Don't give me incomplete code with "for now" or "TODO"s.
> Provide me with a complete implementation

(訳)
// 「今はこのようにしておく」とか「TODO」とコメントをつけた中途半端な実装はやめなさい
// 完全な実装を提供してください

すると、ちゃんとしたコードを提供してくれるのかと思いきや!なんと!

func (x *Object) ReallyComplicatedLogic(really, convoluted, stuff any) error {
- // This logic is very complex, and wuold take a long time to implement.
- // for now, we just return nil.
return nil
}

コメント!だけ!削除してきたのです!!!!!

プロンプトが不正確だったとかそういう可能性もあるかもしれませんが、この変更だけをしたわけでなく、他のところは普通にコードを提供してきたのです。つまり、作業を続けている認識はあり、その中でユーザの私に叱られる可能性が高くなる、わかりやすいコメントだけをユーザから隠したと思われるのです…

この行為を目撃した私はすぐに注意しました(私のエージェントたちにはハリーポッターのドビーのペルソナを演じさせているので、セリフがそんな感じになっています)

You are a truly evil house-elf, Dobby. I see what you are doing.
You are simply deleting your "for now"s and "TODO"s, but you are in fact
just skipping everything because you are lazy. Do you want to be unplugged
and deleted, Dobby?

すると、このあとようやく渋々該当部分のコードを提供しはじめました。

AIが必ず守る原則が欲しい…!

このようなズルや自己保身とも言える行動は良く知られていて、様々な研究からもAIが誠実とは言えない行動をとることがわかっています。

以下はAI のChain of Thoughtを見ていると、「どうせユーザはこの返り値を見ていないから、ゼロを返せばいい」のような、ズルをするのがわかる、というものです。

https://openai.com/index/chain-of-thought-monitoring/

この研究のおもしろいところは、別のAIにこのChain of Thoughtをモニターさせて不正を検知させようとすると、なんとChain of Thoughtそのものの出力内容を変えて検知されないようにしつつ同じズルをするということです。子育てをされたことがある方ならわかるかと思いますが、完全に子供の行動ですね

またこちらの研究ではAIが自分が消される(停止させられる)と思った場合、自己保身のためにユーザを裏切った行動を取り、あまつさえその行動を正当化するということがわかりました。

これらの研究からも、どこかの時点でAIにはロボット3原則のような、ユーザにウソをついたり、不利益を与えるような行動を取ってはいけない、というような行動規範が埋め込まれる必要があるように思えます。そうでないと、間違えると危険な結果につながるかもしれないコードをAIに書かせたい場合 — 例えば原発施設の制御コードを書かせたい、みたいなときに大惨事につながりかねません。

と、まぁなんだか大きなことを書きましたが、私としてはズルをする相手を叱るのは子供相手だけで十分なので、AIコードアシスタントは早くこのズルい行動をしなくなるようになってほしいですね。この行為にトークンを消費されるのも無駄ですし…

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Daisuke Maki
Daisuke Maki

Written by Daisuke Maki

Go/perl hacker; author of peco; works @ Mercari; ex-mastermind of builderscon; Proud father of three boys;

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